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このブログは小説・映画の「ブレイブストーリー」の二次創作兼雑記ブログです。原作者様、各権利元関係者様とは一切関係ありません。
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なんとなくほの暗いので閲覧注意 所謂死にネタ警報

読んでからの苦情はなるべくなら言わないで欲しいなぁ、と思う。蚤の心臓ですから・・・・・!
先日の「斜陽」の一文が使いたかったのと、叔母さん不足だったので(笑)
横道逸れてるから、藤の花のが進まない。しかし某なつかし番組のタイトルからとった訳ではない、ハズだ。


「夏の花が好きな人は夏に死ぬ、って本当かしら」

文庫本に眼を落としたまま、我が甥っ子がオネェ言葉を宣う。

「ハァ?」

ダイニングテーブルを挟んで真向かいに座るあたしはいぶかしげに、つい、睨んでしまった。

「睨まないでくれる?俺の言葉じゃないよ。コレに書いてあるから」

ぱたん、と文庫本を閉じて美鶴が掲げたその本のタイトルは太宰治の「斜陽」

「うわぁーアンタ、なに?文学青年チックなモン読んでんねぇー。かっわいくなーい」

「叔母さん。そのアタマの悪そうなセリフ、人前では言わない方がいいと思うよ」

カチン、と。
何時もそうだった。天の邪鬼で捻くれ者で、底意地が悪いのが基本姿勢だ。

「なにそれ!美鶴、アンタ、あたしのこと馬鹿にしてるでしょー。言っとくけどその本だってあたしのだし!一応、人前では才女!デキる女で通ってますけど!たぶん」

「知ってる。だから言ってる。俺の前ではいいけどね」

さらり、と。

なんでもないように、偶にあたしが困るぐらいの直球を投げるのだ、この甥っ子は。
普段は全然、そう、全然可愛くないのに。

西陽が眩しいぐらいに差し込んできて、テーブルの端に置いてある小さな鉢植えが影を落とす、くっきりと。
小さな花から薫る匂いに、うっかり泣きそうになった。
眩しくて、優しくて、尊くて、柔らかい。

なんだか嬉しくて、懐かしい。


「――――――、なぁーんて夢を見たんだけどさァ。いやぁ、参ったねー。もう、笑えばいいのか!?って、ねぇ?」

朝陽が差し込む部屋で新聞を左手に箸を右手に持ちながら大袈裟に肩を竦めた。

「叔母さん、行儀悪い。食べてる時ぐらい新聞読むのやめたら?それとヒトを勝手に夢に出さないでくれる」

正しい箸使いでごはんをひとくち、口に運ぶ。
綺麗だなぁ、と不覚にも思ってしまった。

「なに」

「んーん。アンタってさ、全然可愛くない奴なんだけど、たまにさ。キレーな奴だなぁ、って思うよ。あ!箸の使い方を言ってるからね!誤解しないよーに。でも、まぁ、顔もちょっと!ちょっとね!!イイカナー」

「はぁ?」

自分だって、満更じゃない(ちょっとだけ)と思ってたりするんだけどこの甥っ子を眼の前にするとつい、卑屈になってしまう。モト、がいいからだけじゃない。
たぶん、育ちが良い、んだろうと思う。

「名前に負けてないよねぇ。いいなぁ、美しい鶴!ダモンネー」

「誉めてないだろ、それ」

眉間に皺を寄せながらもくもくと箸を口に運び続ける。

「誉めてますー。あたしなんか、名前負けしてるからね!あんたみたいに『美しく』ないもん。もっときれーな花が良かったし!」

「俺は好きだけどね」

ことり、と静かに茶碗と箸を置く。
透き通る眼差し、柔らかな笑顔。

「え、なに、急に」

こんな風に笑う奴だったっけ?

「叔母さん何時までこれ飾ってんの?もう、花ついてないのに」

美鶴がテーブルの端の小さな鉢植えの花の葉をつ、と擦る。
何時だったか、美鶴が買ってきてくれたものだ。
言葉の割りに、ばかに優しくて丁寧な仕草に、ちくり、とした。

「いいの!それ枯れてないもん。また、咲くんだから!」

「思い出は残り香に似てるね」

嫌だ、どうしよう、心臓が痛い。
ひやりと冷たい汗が背中を伝うのが気持ち悪い。

「もう其処に無いのにね。なのに、どうしたってこんなにも懐かしくて、でも。遠い」

「ねぇ、アンタ寝惚けてんの?ナニ文学青年チックな、」


――――――、あぁ。きっと、朝陽が眩しいから。ぼんやりと風景が滲む。


「太宰もあんな辛気臭いセリフじゃなくて、夏に生まれた人は夏の花が好き、とかで良かったかもね。だったら、さ」

「美鶴、花が好きなんて今まで言ったこと、ないじゃない!」

あたしは泣いていた。ううん、ほとんど、叫んでいたのかもしれない。

「うん。だからだよ。今度はこいつの時季に、なぁんていいかもね」

美鶴の手にはニオイスミレが一本。

「俺の好きな、花」

ばーか、ばーか、ばーか。なに、そんな気障ったらしいことしてんの、なんで。
美鶴のばーか、あたしだって、あたしだって!

「当たり前でしょう。嫌いだなんて言ったら拳骨ね」

そっと、この小さな花を受け取る。

「あーあ。ほんと、可愛くないね」

「お互い様、でしょ」

からからと、笑いあう。
良かった、ちゃんと笑えた。

「ねぇ、あたしはまだあの時23歳で。美鶴と一回りしか離れてなくて。いい叔母ってやつじゃなくて、だって。たくさん、たさくさん、」

「あのさ。顔はモトモトだから仕方ないとして。忘れてるだろうけど、箸の使い方は叔母さんに直されたんだけど?」

あぁ、また。
アンタってそんな風に笑ってたんだね。いやだ、敵わないじゃない。

「いつも、感謝してたよ。まぁ、俺はどうやら捻くれ者で天の邪鬼で底意地が悪かった、らしいからね」

「夢ん中だからって勝手にヒトの心を読むなぁぁぁぁ!!!」

「あははははは」

眩しくて、優しくて、尊くて、柔らかい。
そうして、夢は何時だって遠くて、懐かしくて、果敢なくて、温かく淋しい。

「いい叔母さん、てのがどんなのを言うか分かんないけど、笑った叔母さんはイイ女だと思うよ」

ぱちん、とあたしの手の中のニオイスミレが弾ける。
ひとり夢から醒める頃には、忘れているかもしれないから。
最後に魅せるのは、やっぱり笑顔がいいと思ったから、笑ってあげる。

「当然でしょう?」

アンタみたいに。
何時もの様に、不敵で傲慢にも近い強気な顔で。

さようなら、おやすみ、あたしの美しい夢。

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