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このブログは小説・映画の「ブレイブストーリー」の二次創作兼雑記ブログです。原作者様、各権利元関係者様とは一切関係ありません。
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*この日付けであげたものを、10/23現在がりごりし直したものです。


こんばんは!(やぁ・・・・とかは言えないなぁ・・・・・・しょぼん)
思いのほか、ごしょごしょとしてたら時間が掛かって前回から気が付けば5ヶ月放置??
うわぁーうわぁーうわぁぁぁあぁ!!

そらハナシも忘れるよね、皆様(本人もこってり忘れてるさ!)
言い訳はまたのっそりとブログにやってきた時にしますね。
あと、お節介な補足というか最早こじつけにしかなんない屁理屈モドキ・・・・・!

突っ込みどころ満載で、本気すみませんと思いつつ。
ややがりごりしたい事が半分ぐらい、がりりりんと出来てほんのちょっぴり満足(かもしれない)
この勢いで木曜日と、あと・・・・うん。ちょっと、自分の中ではタブーネタをごりりりぃとしようか、な。

さて。いつも、みたく長々と?注意書きモドキをさせて下さい。

お読みになればぴん!とお判りになるやもしれませんが、今回ブレイブの例のシーンをあくまで!
あくまで、私の希望的解釈をもとに書いてみました(黒さんがいる時点でバレバレだと思いますが)
すみません、本当に原作とは多分180度違った方向に全力で走っていきました。

受け取り方は様々ですが、もしご不快な気分にさせてしまったら本当にすみません。
その際は、ほんとチキンでびくびくしてしまうんですが・・・・
「ここが気にいらんのじゃぁぁ!」と、教えて頂けたら嬉しいです。

狐の美鶴殿は素敵サイト様からお借りしているキャラなので、愛着はそれはもう半端なくあります。
ですので教えて頂けたら私も、このように180度原作から明後日の方向に突っ走っていった理由を出来る範囲でお伝えしたいと思います。

注:何も私のモドキなSSの感想等が欲しいって訳では決して!!!ないです。

ただ、あぁこういう妄想に至っちゃったかぁ~とか、そっと哀れんでやって下さい。うん、なんとなく末期な気がぶんぶんします・・・・!

いつになくシリアスになってしまったのは、本気で。

       「やっちまったナァ~」

・・・・・・・・・って思ってるからですよ、もちろん。ふははは!!!

よっしゃ、どんとこーい!と懐が限りなく大きい皆様のみ推奨。
お付き合い頂けたら、とても嬉しいです。

ちなみに、次項からラスボス(?)編なんだけども。

       ほんと、終るのかしら。狐・・・・・!



ずっとずっと永い刻、貴女を見ていたんですよ。
貴女だけを。

だから、なんておこがましい事は思わない。
しかしながら自惚れと言ってもいいくらいの傲慢さを持って、私は気づいた。

   私だけが、気づく事ができた。

貴女はゆっくりと、貴女自身も気づかないうちにこのセカイの不完全さに声のない悲鳴をあげた。

泣き喚くこともできず、まして病むことも赦されず、貴女はゆるやかに罅割れていく。

このセカイをヒトリ産み出しながら、またヒトリきりでセカイを倦みだした頃。

貴女の、きしむ音がひときわ。


        大きく、なった。


狐草紙異聞ー桂男の項ー(幕)一切皆苦


「おい」

彼の固有名詞がない呼び掛けに、その場にいる誰もが応えることが出来なかった。

「アンタのこと、呼んでるんだけど」

彼はもう一人の自分自身を見据えたまま、私にちょいちょいと指を向ける。
それで初めて、あぁ私のことかと認識する事が出来た。

「っ、ふ。なんでしょう?」

腹に開いた穴や、失った馬手の傷口が疼く。
血は止まっていた。
あぁ、再生しようとしてるのか。
相手もそれは同じだろう。

余計な事を、とふと思った時思わず笑いがこみ上げた。
ようやく彼が、こちらに貌を向けた。

「良かったな、その程度で済んで」
「気に入らないですか?」
「別に。大したことないクセに、白々しいなと思っただけだ」

それを、『気に入らない』と言うのに。
自嘲ではない笑いを、零す。
彼は眉間に皺を寄せて片眉を大仰にあげる仕草で小さく威嚇した。

ちっ、

心底嫌そうに、齎される舌打ち。

「中途半端な嘘なら吐くな。偽善にもならない。それはただの自己満足だ」

本当に。貴方の言う通り。

「おい、モドキのボク。オレは生身の亘に触れられないから。お前がこいつの血、止めてやれ」


「お前、モドキって!ボク、やっぱりお前達って好きじゃない!!あれ?ふぅん。お前、タマシイなんだ?しょうがないかぁ、亘の躯だしね、ソレ」

どうすんのさ、と欠伸をしながら思いっきり伸びをする。存外、暢気なものだ。

問いには応えず。
彼は蹲ったまま焦点の合わない自分自身に全身で溜め息を吐くと、しゃがみこんでもう一人の自分の弓手を摘み上げた。

びっ、と袖付け辺りを剥ぐ。
ぶんっ、と叩きつけるように「ボク」に投げ遣った。

「それでなんとかしとけ」
「はぁ?ボクが?」

「そう。お前」

「あのさ、どうすんのさって言ってんじゃん!ボクの言ったこと聞いてた?!!」

ぎゃんぎゃん纏わり憑かれるのは御免とばかりに。
鬱陶しそうに弓手を二、三度と前後に振る。

「なっ!」
「あぁ、そこの亘の皮を被ったやつ。ふん、ややこしい。お前、『イツカ』だな?」

心なしか、幾分声音がやわらかくなった気がする。

「ぁ、うぅ、ん」

戸惑いと驚きに少し揺れる瞳に彼は、初めて。

「お前、今ウツワはニンゲンだからナァ。こいつが血ぃ止めるまで動くなよ」

ゆるやかに、微笑った。

「だから!こんなの渡されても!!どうっ、」

やわらかな微笑が消えて、凄まじく見下した眼つきで相手に向き直る。

「イチイチ説明しろと?裂いて捲いてやるぐらい思いつないか。なるほど。怖ろしく物分かりが悪いな、お前」

「むかつく!美鶴以上にむかつく!お前!!」

「それはそれは!どうも」

「随分、お優しいんですね。貴方は、何をしに来たんでしょう?」

薄く眇められた赤い眼。
良く見知った男に似た、瞳の色。
そういえばあれに、所作が似ている。

「遊びに来たように見えるか?」

ヒトを喰った笑い。
彼はどこまで解っているんだろう?
なにを知っている、んだろうか?

「従順なだけが、良い子供ということもないよなァ。親に逆らうのも、子供の特権じゃないのか?」

       なぁ?美鶴

彼は少し屈めるようにして自身の半身と対峙した。
延ばされる指先が頤に辿り着くと、ついとカオを上げさせた。

伏せられる瞳は、彼を見ようともしない。
ささやかで、静かな拒絶。

拒絶されてなお彼は、穏やかだった。
激昂することもなく、落胆することもなく、まして嘆くこともなく。
ただ、はっきりと彼は自身に諦観を色濃く感じていることは確かだった。

離されるのは指先。
彼は触れる時と同じ気安さを持って、手放す。

あっけないものだ。
距離、存在、執着そうして憎悪、もしくは依存にも似た不安定な感情を。
それらを含む自身の要素を。


彼は本当に手放せるのだろうか?
何故、手放さなければいけない?

私の馬手が再生していく、腹の傷が癒えていく。

反対に彼は癒えることのない瑕が抉られて、刻まれていく。

それに酷く、安堵する私がいる。

「おい、モドキ。イツカの傷は?動けそうか」


「モドキっていい加減うんざりなんだけど。お前だってモドキじゃん!!まぁ、皮だけやられたみたいだね。なんとか、大丈夫じゃないの」

「残念なことに。オレもミツルなんでね。お前みたいな、ナナシのモドキじゃない。そうか、じゃぁ、そろそろ行くか」

はぁっ!!?

驚嘆の色を含んだ叫びが、些か喧しい。
貌を顰めて、不快感を顕にしながら彼は躯を起こした。

「なにそれ!意味解んない!じゃなくて、まだ!亘が還って来てないんだよ!!それに行くって、どこっ!イキナリやって来て、主導権握んないでくれるかナァ!!」

矢継ぎ早に紡がれる、言葉たち。

「ここ仮初めのセカイだ。すぐに壊れるぞ?まぁ、心中したいなら止めない。好きにしろ」

「だーかーらー!その極端な短絡思考なんとかなんないかなぁって!ちょっと現在の最優先事項の説明してみるとかサァ」

言ってみたものの、期待はしてないようだった。
止血しながら、諦めの溜め息を全身でつく。

「まっいっか。うーん、こんなモンじゃない?」

不満を洩らしながらも、器用に晒状に捲いた着物の先を小さく裂いて、固く結んでやる。
多分に、この存在は持ち主の性格を継いでいるのだなと、思う。

「ほら、立てる?アンタは嫌いだけどソレはボク達の躯だし。で、モドキ。最優先事項は亘を迎えに行くってことで、いいの?」

充分、おヒト好しに見えますよ?
同じカオ同じ躯でつい先刻迄、いがみあっていた別個の人格を有する存在たちが寄り添って立つ。

「及第点だ。限りなく、最低ラインの」

「ハァ?ギリギリってこと?なんだよ、ついでってこと?!」

「そういうつもりはないが、なるほど。成り行き上『ついで』になるな」

あぁ、彼はやっぱり解っているのかもしれない。
もしくは、彼らと言った方が正しいのか。


「ここに置いて、行くのですか?」

誰を、とは言わない。何処へ、とも聞かない。
今度は彼が捨てる側に廻るのか。

「置いて行くも何も。はん、それをオレに聞くのか?お前も大概いい趣味してる。さて、どうだろうな」

彼の問い掛けに。
足元の存在が、ようやく彼を見遣った。
吐き出された声音は、思いの外強さを伴っていた。

「そんな温い遣り方じゃなくても。お前は俺を、屠れるだろう?」

ほんの一時雑じる、視線たち。
外したのは、意外にも彼の方だった。

「ふん。オレはお前程、莫迦じゃないんでね」

「はははっ!お前、どうして今更ここに来た?このまま俺を。ここにいる連中を捨てていく選択肢もあっただろう」

彼が、驚いて眼を瞠る。

「美鶴?」

「あや、は。そうか。俺が喰ったんだったな。いくら俺でも、お前が俺のナカに這入り込んできて、気付かない訳ないだろう」

洩らされる乾いた、自嘲。

「そう、だったな。あぁ、そうだった。さい、ごに。父上を、手に掛けたのも俺、だったな」

独白に近い物言い。
 
「美鶴」
 
「解けたんだ。まじない、が。ノロイと言ってもいいな。解いたのはお前。お前が要だったんだ、俺に施された呪いの」
 
「美鶴、お前」
 
消魂しい哂い声が、響く。
 
「憶いだした。そうだったナァ!!あやを喰ったのは俺。父上を、殺したのも俺だったな!!!」
 
叫んでいるようでもあるし、泣いてもいるような咆哮だった。


「桂男。宮中から逃げ出すのは簡単だったろう?」

「美鶴」

自身に呼び掛ける彼の眼が、不思議な色合いを帯びていく。
あぁ。
この色味、どこかで見たことがあると思ったのは、
 
「お前も!!どうしてあそこから出て来た?知っていただろう?外に出たら、消されるだけじゃないか」

そうだ。彼女の――彼女の、瞳の色だった。

「ヒトが悪い。悪趣味だな。亘の皮を被ったそいつを俺に始末させたかったんじゃないか?お前も、ちょっと足りないんじゃないか?ははっ、仲良く用済みな訳だ」
 
「美鶴、やめろ」

「そんなの、知ってる。あたしは、あの女にとって必要ないもの。でもね、要らないなら。なんであたしを、閉じ込めておくのか、解らなくて」

どこまでも透きとおっている、色。
どこまでも見透かされているような、色。

「要らないなら。さっさと消しちゃえばいいのに。あの女なら、簡単なのに。要らないから、捨てたんでしょう?あたしを」

いいえ、と言っても信じて貰えないのでしょうね。

「はははっ!本当だ。さっさと消せば良かったんだ」

「美鶴!」

「ん?まずいナァ。俺がいないと境界の結界が消滅するなァ。あぁ!お前!!お前がいたな!今度はお前が拾われる番か。厄介だぞ。あの御方の癇癪は凄まじいからナァ」

くすくす、愉しそうに笑う。

「美鶴、オレは『神』じゃない」

「どうして今更、憶いださなきゃいけないんだよ。どうして、そっとしておいてくれなかったんだよ。俺はお前を捨てたんだ。要らなかったんだよ!!どうして、還ってきたりしたんだよ、どうしてどうして、どうして!!!」

あぁ、彼もまた。勘違いを、している。
諦めることは、受け入れることにとても、よく似ているけれど。

「貴方は、狡いですね。そうやって昔も今も、誤魔化して、擦り替えてきたんでしょうね、きっと」

諦めることは、手放すことだ。
誤魔化したり、擦り替えることが、出来てしまう。

「いつまで、そんなふうに逃げる気ですか?妹君だけじゃない。亘殿も喪うことになるんですよ」

貴方は気付いているんでしょう?
自分が持っている大切なものたちを、そうやって喪い続けてきたことに。

「それだけじゃない。貴方の存在も。セカイも、全て喪う事になりますよ。貴方はそんなことがしたかったのですか?」
 
自分を喪いながら、傷つけながら、手放す為の免罪符を手にして。

「何も感じない。何も考えない。何も思わない。何にも動かされない。そうですね。何も持とうとしなければ、喪うものもありませんね」

そうやって、まんまと。
ヒトリきりの、理由を創りあげる。

「煩い!!いいんだ、もう。疲れたんだ、嫌なんだ、面倒なんだ、どうだっていいんだ。あやを喰ったのも、父上を殺したのも、あの御方に捨てられるのも、全部!!放っておいてくれよ。行けよ、消えるんだろここ?俺は、ヒトリで、」
      
「いい、なんて言うなよ?」

彼は半身を引き揚げると、そのカオを両手で挟み込んだ。
しっかりと、自分自身と向き合わせるように。

「美鶴、オレはお前に還るつもりはない。まして、雑じる為にお前のとこに来たわけでもない。オレは、確かめに来たんだ」

「な、にを?」
「お前がまだ、オレを必要としているかどうか。オレは、お前を必要とするかどうか」

彼女の瞳が、揺れる。
透きとおった瞳に、漣がたつ。

「お前はオレを捨てたと言う。オレもそう思ってたから、ずっとお前を赦せなかった。でも。お前はオレよりも、いつだって。ずっとずっと、泣きそうなカオをしていた」

幾月、月日が流れても。
千載の刻を、重ねたとしても。

「要らなかったんだろう?強くなれたんだろう?お前が望んだことだろう?なのに、どうして。どうして、オレよりも苦しそうなんだよ!!!」

ヒトリ、では。
喪っていくばかりだったから。

「ヒトリでいい、なんてよく言えるな?巫山戯るな!!オレを捨ててまで、欲しかったモノが手に入ったんだろう?ならもっと、マシなカオしろよ!」

彼が、憎もうと捨てていこうとしても出来なかった、と同じように。
とてもとても、貴方を必要とするように。

「そんなカオして、泣くなよ。どうして、憎ませてくれない?嘘吐くなよ。お前、ヒトリでいいワケないから、オレを産んだんだろう?」

貴方も、また。
 
「どうして?どうしてお前そんなに強いんだよ。どうして、俺は泣いてるんだ?」

そうして。
ヒトリでは抱えきれないものを、分かちあいたかったのかもしれませんね。
 
 「言っとくけど、オレだってそんなに強いわけじゃない。だけど、ヒトリじゃなくて、お前がいるから。亘とあやと。お前が、必要としてくれるなら、いくらでも強くなってやるさ」
 
突然。
ぐにぃ、と惚けているカオ押し潰す。
 
「お前、いつまでそんなカオしてんだ?美鶴、来い。たまには、親子喧嘩ぐらいしてもいいだろう。ふん。ヒステリーでセカイがぶっ壊されるなんて、堪ったもんじゃない」
 
にぃぃぃぃ、と笑う。

「ねーぇ、ミツル。貴方の確かめたかった答えは、でた?」
「あぁ、充分だ」

少しの、羨ましさを滲ませながら。
なにそれ、と言う彼女はその答えに満足しているみたいだった。
     
  
  捨てたんじゃなくて、産みたかったんですよ。
  
 
瑞花様。
貴女もセカイなどを、産みだすよりも先に。
そのことに気付けば、よかったのかもしれません。
 
        それでも。

たくさんの「だろうか」と「かもしれない」を含んだまま。
セカイの、壊れていく音がする。

「ちょっ!!なんかひっじょうに!!マズイ気がするんだけども!!」

モドキのボクが、崩れだしたセカイにひどく真っ当な反応を示す。



       きしむ、きしむ、きしむ、終わるセカイ。



貴女はようやく悲鳴をあげることができたのですね?
泣くことも、喚くことも。
いつだって、我慢しなくてもよかったのに。

そして、


    貴女の、きしむ音がひときわ。


          大きく、なった。


「あーぁ、始まっちゃった。あ!瑞花はさ、アヤカシのセカイもニンゲンのセカイも壊そうとしてるんだよ。知ってた?」

「ボクが知るワケないじゃん!!それ、早く言えよ!で?お前等とソイツはさ、グルなワケ?」

くすり、と彼女が笑う。
忘れてた。彼女はこんな風に笑うんだったか。

「違うよ。グルなのは、瑞花と桂男、なのかな。あたしは、うーん?ニンゲンのセカイに行きたかったし、亘の魂も喰べてみたかったけど。でもね。なんか、違ったみたい」
 
 
      あのね。
      美鶴はいいなぁ、って思うのってどうかしてる?

 
「世も末だね。あーだから、セカイが崩壊するのか!なんだよ、お前も瑞花ってヤツに迎えに来て貰いたかったってこと?」
 
「なっ!!ちょっ!!と、違う、くないこともない、け、ど。美鶴!!あんた早く瑞花のとこに渡しなさいよ!!あの女に謝って貰わなきゃ気が済まないんだから!」
 
「残念だな。美鶴ならもういない。お前等がぎゃんぎゃんやってる隙に、先に渡ってった」
 
「うっわ!あいつ、一言もなしか!!」
 
「まぁ、あいつが先渡ってかないと狐穴は安定しないからなァ、って言いたいとこだけど。はん!あいつ、盛大に泣いてたからナァ。だからじゃないか?」
 
「ばっかみたい!どうせ泣いたこと認めないんだから!まぁいーや。亘に躯は返してあげるけど、うーん。どーしよーかなぁー!ね、桂男」
 
ねぇ、姫。
本当は知っていて、騙されてくれたんでしょうね。
 
「すみません、私は玉兎を。姫はあの子達が好きでしょう?あまり時間はないですが孵りそうな子達だけでも連れて来ます」
 
瑞花様が、セカイを消し去ろうとしてること。
それには三橋の君が邪魔であること。
彼が人柱の要で在る限り、彼女が産んだ―――
 
「なに言ってんの??ほら、早く行こう?閉じちゃうよ!!はやくっ、」
 
―――魔族が、結界を越えられないから。

気付いていたんでしょう?
もう彼女は魔族しか、産み出せなくなっていることに。
自分が産んだ魔族を封じ込めながら、少しずつ彼女が罅割れていくことに。

「必ず。後から追いかけます。言ったでしょう?私は貴女に『惚れている』んですから」

姫、貴女はそんな半神である彼女を見ていたくなかったんでしょう?

「私は嘘吐きでしたけど。本当に愛していたんです」

卑怯な遣い方をする私を、どうか許して下さい。
たったヒトリでこのセカイを、貴女を、私達を。
産み出しながら苦しむ彼女を、貴女は救おうとしてくれた。
 
貴女以上に彼女の方が、貴女を必要としていたのに。

          「さようなら」

狐穴に引っ張り込もうと、しがみつかんばかりだった彼女の力がひととき、緩んだ。

     少しだけ、永遠に、さようなら。

無理矢理に、押し込んだ時に見せた彼女の瞳を。
忘れられそうに、ない。それが、嬉しくもある。
 
それは、多分。唯一、私が持っていけるものだから。

「ちょっと、ミツル!!あっ、だっ!いっだぃぃぃぃぃ!!」
「うるさい。さっさとお前も行け、モドキ」

彼がモドキのボクに拳骨を振り降ろし、間髪入れずに狐穴に蹴り込んだ。

   ばかばかばかばかばか、ミツルのバカァァァァァァァァァ、

「ちっ、五月蝿いやつだ。どうする?イツカをエサに美鶴の結界を消滅させる事がこれで出来なくなったな?」

彼が、真っ直ぐに私を見据える。
そんな風に、真っ直ぐにヒトを見ることが出来る彼を羨ましく思う。

「そうですねぇ。ニンゲンのセカイを壊すのは難しいですかね。でも我々のセカイは、どうだと思います?境界を越えれはしないけども。ほら、ようやく這い出ることが、出来たみたいですよ?」

永い刻を封じ込められていた、憎悪が憤怒が。
そうして、行き場のない哀しみを纏った蛭仔たちが地中から産声を上げる。

産まれ落ちた喜びの代わりに存在するのは、確かな悪意。
いや、まだ彼らは本当の意味で産まれ落ちてはいない。
ここは、産道に過ぎないのだから。

「魔族、ねぇ。なるほど、分け隔てなくオカアサマはお産みになったってことか!素晴らしいね、まったく!!崩壊と誕生が同時だなんてオツだなぁ。ほーぅ。どいつも封じ込められてた分、随分ご機嫌なカオだ!」

彼女は封じ込めながら、この仔らの誕生を望んでいた。
彼女の倦む、セカイを消し去ってくれるこの仔らの誕生を。

「ミツル殿、どうしてもっと早くに逃げてくださらなかったんでしょう?彼らは産まれたてでね。見境ないですよ」

早く、彼女の元に。手に、この仔らを戻さなければ、いけない、のに。
過ぎるのは、さっき私を射竦めた瞳の色。

「ふーん。お前が、そいつらのエサになるって?で、オレも時間切れで道連れとかってオチ?」

蛭仔達が肉を求めて、一斉に蠢きだす。
最初の一匹に倣うように、幾匹も、幾匹も、幾匹も、群がってくる。

 
 眼の端で、狐穴の崩壊が始まるのが見えた。
 
刹那、

「やれやれ。おまいさん、いつからそんなつまらん男になったんだろうねぇ」
 
それはそれは毛並みの美しい、大きな黒狗が哂う。
 
漆黒のしなやかな肢体に、紅玉の紅い、紅い瞳。
その眼を逸らすことが、出来ない。
彼の瞳のナカの私が、僅かに揺らいだ気がした。

「彭侯」

にやり、ともう一度
黒狗は哂うと赤く染まった月を、仰ぎ見た。
 
「なに、月見のついでにな。やけに月が赤いと、思ってぶらぶらと遣って来たら。なんだい、おまいさん。随分、愉快なことになってるじゃないか」
 

前脚で群がってきた蛭仔たちを一蹴する。

「おまいさんが、盛大に振られた時と同じぐらいは面白いことになりそうだの、桂男」
 
その所作が美しいのは、このアヤカシが持つ気高さと品格の為だろう。

「はん!崩壊するセカイに散歩に寄っただと?なかなか粋じゃないか。気が合いそうだ」


ぶつり、ぶつりと不快な音が産みだされていく。
いけない。止めなければ。
やめさせなければ、彼女の、彼女のこども達が。
 
「ふむ。おまいさんは、アレの半身かぇ。なるほど。アレにそっくりな、子憎たらしい面構えよな!」
 
最初にあげる産声が、断末魔だと?
 
二匹の獣たちが赤い月を見て、躍りだす。
響される調べは、耳を塞いでも聴こえる断末魔。
 
「やめろやめろやめろやめろ!やめてくれ!この仔らもあの御方の仔じゃないか。やめろ、なぜだ?この仔らと私達のどこが違う?やめろやめろやめろ!!やめ――――、彭侯、おま、え」
 
揺らぐ、セカイ。
言葉が紡げない。力が入らない。
あぁ、堕ちていく。
 
「そりゃぁ、私の眼をおまいさんが魅たからだとも」
 
頬にあたたかな、温もり。
ぞっとする、ハズなのに。
振り払えないのは多分、力が入らないせいだ。
 
「そんな風に。相も変わらず難儀な性分を捨てきれないおまいさんだから。こんなとこまで、わざわざ散歩に来てみたのだよ」
 
 



――おまいさん、なんだい。
 
どうして三橋の君にちょっかいかけたりしたんだぇ?
珍しいじゃないか。
 
ふん、アレは何なんだ?いきなり、喧嘩を売りつけてきたぞ!
 
そりゃぁ、おまいさんが悪かったんだろうよ。
 
悪くない!
 
それで?
 
やはり似ているなと、思ったんだ。
 
似てる?ははぁ!どちらにだ!派手に振られた方にか??
 
・・・・・・・・・・、瑞花様に、だ。
 
ふぅん。
 
なぁ。
ヒトは弱いものだな。絶えず何かに怯えている。他者であったり、老いであったり、病だったり、死であったり。あまつさえ、自分自身にも怯えていたりして、弱い生き物だ。
 
そうだな。
 
だから、それらを越えた揺るぎない彼女に。
私達を産み出した存在に。
皆、焦がれるのだろうと、ずっと思ってきたんだ。

しかしね、お前。
彼女ほど不自然で不安定で不完全な存在はないとも思って、しまうんだよ。
 
ほう?
 
私達、アヤカシの祖を産んだのは彼女だが。

どうして、彼女は。
彼女のように私達も単性にしなかったのだろうな、と思ってな。
私はそれがようやく、解ったよ。
 
うん?
 
でもきっと、そのことに彼女は気付けないんだ。
完全で不完全で、当然で不自然な、ヒトリきりの存在であるから。
 
 
――とても、とても淋しい現象なんだよ。
 
 
(そんなところが、とても。よく、似ているんだよ)
 
 
 


 







 
 
 


 
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