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や、やったよ・・・・Iちゃんや・・・・・・(笑)
言い訳も、出来の粗さも本当にてんこ盛りなんですけどね・・・・・・!
それは、また後で言い訳しに、のそのそと来ますね。
今回、書きたいシーンがあったので無駄に長くなったと言う・・・!
むしろ、そのシーンいらないんじゃ・・・・げぼん!
ほんと、ツマンナイ上にだらっだらっと長いですが、お付き合い下さると嬉しいでありんす。
撥ねられた・・・・・んだよぅぅぅぅ。
なんだろう、これ。
星の生まれる日。
七月七日、七夕、天気は雨。
夕飯の片付けも終わって、ついでに学校からの宿題も片付けて。
どうしようかな、とさっきからぐるぐる考えていた事を一旦保留にする事にした。
部屋が蒸し暑い。ちょっと空気、入れ替えようか。
窓をからら、と開けると雨の匂いと冷えた空気が部屋に流れ込む。
七夕の行事に、特に思い入れがある訳ではないけど。
それでも、晴れて欲しいなと思うのは多分、小さな頃からの刷り込みだ。
昨日から続く雨の鬱陶しさに、ウンザリしているってのもあるとは思うけど。
「でも、梅雨だもんねぇ。晴れろって言う方がアレだね」
「『アレ』ってなんだ、『アレ』って」
「ハァ?『アレ』って言ったらアレでしょ?アレに決まってるんだって!こう、なんてゆうかさ!!阿吽の呼吸ってヤツ?『無理だよね』って言うのがさ、た、ん、しゅ?しゅしゅしゅしゅしゅしゅぅぅぅぅぅぅぅぅ???」
真横をちらりと見れば、鮮やかな朱色の着物の端が映る。
そのまま視線を上げれば、眉間に皺を寄せた人外魔境が突っ立っていた。
不機嫌そうと言うよりも、恐らく不機嫌で確定だ、間違いない。
つい、ほんのつい独り言を呟く前までは、この部屋に僕ヒトリだったのに。
「美鶴!!!だからさ。あのさ。あのですね、こぅ、もう少しヒトらしく登場願えませんかね」
わ、しまった、と思う。
「生憎。俺はヒトじゃないんで」
はい、キター。
予想通りの可愛くないセリフが的確に打ち返されたよ、これ!!!
「はいはーい。ソウデスネー。で、なにか用だった?昨日、お社掃除したし。あー、ごめんごめん!ぴーなっつ最中!!明日、持ってこうかなと思ってたけど。今日、雨だから」
心なしか美鶴の眉間の皺が、ざら増した気がする。
美鶴は「ぴーなっつ最中」なるモノが好きだ。
千葉のおばぁちゃんから時々届く、宅急便の中に「ぴーなっつ最中」が入っているのはいつもの事で。いつだったか、美鶴に持って行ってあげたらえらく、お気に召したらしい。
口に出して言わないし、絶対に認めようとしないけれども。
眉間に皺寄せて如何にもシブシブ感満載、仕方なしに喰わされてますぅぅぅぅぅぅ!ってカオしてるクセに。
毎度美鶴の耳と尻尾がぴぃん!と伸びてるのを僕は知ってる。
「別に。『アレ』如きでこんなとこ来るか」
「『アレ』って、ナン何さ、『アレ』って。こんなとこ、で悪かったね。ふーん、そう?」
相変わらずの仏頂面。
じゃぁ、なんだって言うんだろう?
一瞬、まさかねと思う事が過ぎるけども。
まさかね!ナイナイナイナイ、そんなこんなで有り得ないから!と、一瞬過ぎった考えを却下する。
「雨が降ってるから来なかった、と」
「あ、うーん。ちょっと違うけど。確かに雨降ってるから、ってあるかもだけど。明日行くし、みたいなね。あ、別にお社に行くのがヤダって事じゃないからね」
嘘は言ってない。少し誤魔化した事はあるけども。
「じゃぁソレ、させばいいだろう」
「へ?『ソレ』って、なにさ!『ソレ』って!!」
だから解んないんだって、と口に出しはしなかったけど心の中で突っ込む。
美鶴だって僕に言う程、主語がある訳じゃない。大概、会話は単語で済まされる。
だけども。
どこかのおばさんにみたいに持ち手がオウムの傘、ではないけど、これまたいつの間にか。
僕の右手には真っ赤な番傘が一本。
「ハァァァァァ?なんで?番傘??ハァ!」
こんな時は、『アレ』だ。嫌な予感がする。
「いいから、早くさせ」
する、けども。
美鶴の不機嫌極まりない声に、僕はシブシブかしん!と傘を開く。
「へ?美鶴?」
にょっ、と僕がさした傘のナカに美鶴が入ってくる。
「お前、ヒトだから。最初は苦しいと思うけど、すぐ慣れる。多分」
だから少し我慢しろよ、と聞こえたのか聞こえなかったかは、もうどうでもいい。
・・・・・・・・・、ほら、みろ。嫌な予感、やっぱり当たった(嬉しくない)
「おぼ、ろろろろろろ、ぐぅぇぇぇぇぇぇぇぇえっしゃぁ!」
傘さしたら突然の大雨?、・・・・・・・・なんて!
部屋のナカで、傘の中だけ大雨?、・・・・・・なんて!!
なんで同じ傘の中なのに。
美鶴だけ、濡れてないの!?
ちょっと、都合良くないだろか。
「がぼる、なぼんで、ぶへへへぃき、ぼろろろ、」
美鶴、なんで、平気なのさ、と懲りずに口に出してみたものの。
大量の雨水?が、真上から容赦なく鼻と口に入ってきて地味に苦しい。
「ははっ。わったる、お前ナニ、チンクシャなカオしてんだ?あぁ、元からか!!」
かちん、ときて抗議しようとしても。
眼を、開けていられない。鼻がつぅん、とする。
まるでプールの時みたいだ。
とぷん、と水音が響いて体ごと、下に引かれるような感覚に焦ってジタバタする。
もうヤダ、と傘を手放そうとした、その時。
ぐわし、と手首ごと美鶴の手に握られる。
細いんだけど。
僕よりも大きな手だなぁ、なんて暢気に思いながらうっすら眼を開けると、金色の眼が可笑しそうに笑ってた。
美鶴だけ余裕なのが、少し悔しい。
ゆらゆらゆらゆら、僕らは蒼い水の中を傘で舵を取りながら、揺蕩う。
そこ、ここに。小さな青い光が、ぼんやりと揺れている。
あれ?ナニがこんなに光っているんだろう。
見上げると、どんどん水面が遠くなっていく。
ここ、どこだろ?(少なくとも地上じゃない)
み、ず、の中だけど、特に冷たいとも思わないし。
息苦しい、とも思わない。
それに、不本意だけど。
僕は美鶴にしがみつきながら、そこここに瞬く青い光を綺麗だなぁ、と思っていた。
「もう、平気だろう。おい亘、喋ってみろ」
「ヒトのカオ見て笑うような奴とは僕ァ、口聞かない事にしてるんだけど」
美鶴が言うように息苦しさもなければ、鼻の痛みも何時の間にか消えていた。
だけど、悔しいから言ってやんない。
美鶴に出遭ってから今迄の経験上、僕の周りでは事態は唐突に、急激に、激変するモノだと学んだ(あくまで美鶴限定だけど)
「あ、そう。ふぅーーーーん」
にやり、と笑う。
少し前まで、不機嫌だったクセに。
「三橋様、三橋様では?お久しゅう、ご無沙汰しております」
ゆらり、とそのヒトのもとに降り立つと、美鶴は傘を閉じた。
「五十月。無沙汰はお互い様だ。気にするな。先に胡蝶を遣っていた筈だが」
いかづき、と呼ばれたそのヒトがふわりと笑う。
肩の辺りで二つに分けた黒髪が微かに揺れる。
黒の地に白くぼかした様な小花が散った着物に、鼠色の帯を締めたそのヒトは誰かに、似ている気がする。
た、ぶ、ん、そうだ。
僕はこのヒトによく似たヒトを、きっと知ってる。
「胡蝶殿でしたら、そちらに。本当に、良くして下さって。お心遣い、感謝致します」
そう言うと柔らかく腰を折って、美鶴に礼をした。
あぁ、そうだ。
記憶の中のそのヒトを、僕は憶い出した。
「みすの、さんだ!そうだ、翠簾野さんに似てるんだ」
「それはですね。翠簾野殿は五十月殿の姉君にあたる御方だからですよ、亘様」
ひょこん、と胡蝶さんが僕の肩口から顔をだしてにーっこり、笑う。
長い栗色の髪の毛が、さらさらとほっぺに触れてくすぐったい。
「ちかっっ!!!こんばんは、胡蝶さん」
「あい、亘様。こんばんは、で御座います」
すりり、とカオを摺り寄せてくるのは狐と言うよりも、猫に近いナァとぼんやりと思う。
その白い狐耳の裏側を撫ぜようと指を伸ばしかけた途端、
「で、胡蝶。首尾よくコトは為ったのか」
ぎゃん!!!と胡蝶さんが悲鳴をあげて、僕から飛び退く。
美鶴が胡蝶さんの尻尾を、思いっきり引っ掴んだからだ。
「もも、ちろん、です、けど。けども!!!皆、渡し終わりましタァァァァァ!労いの言葉とかないんですかね?ほんと!!ほんっと狭量なウツワの主人を持つとロクな事ないですね!」
「よろしい。悪いが俺は大器晩成型でな」
美鶴がさらり、と返す。
黙っとけばいいのに、といつも思う。
はぁ、と溜め息を零すと、くすくす、と控え目な笑い声が聞こえてきた。
口許を着物の袖口で押さえて笑う様は、いつか見たあのヒトにそっくりで。
思わずじぃ、と見てしまった。
「あら。そんなに似てますか?姉、と言っても。一族だと言うだけで、血は繋がってないのですが」
似ている、と思う。こくん、と頷く。
もう少し。
もう少ししたら。皆で戻ってくる、つもりなんですよ、
そう言って、儚げに笑うあのヒトを憶い出す。
今年も、あのヒトの姿は僕の街になかった。
「亘様、そんなカオなさらないで下さいな。折角、星が生まれましたのに」
細い指先が僕の前髪を、優しく梳いてから、ぱふん!と両方の掌をおわん型の閉じた。
「え、」
「御手をどうぞ」
悪戯っぽく笑うと、僕の掌に微かに青く光る珠を優しく託す。
「う、わぁ!!!!え!えっ!何処から??この仔達は?お、とが!とくん、とくんって!!」
生きている、おと。
あたたかな、温もり。
一頻り跳ね廻ると、僕の掌を飛び出して行く。
そうして、一回り大きな青い光に寄り添う。
「海蛍の仔だ。ようやっと、ここにも還ってきたんだ。そうか、無事産れたのか」
ふ、と。
僕の横に並んだ美鶴の眼元が優しく緩む。
挨拶をするように海蛍の仔達が纏わりつくのを、苦笑いで迎えてやる。
「母上を待たせるな。往くがいい」
そう言って美鶴が見上げた先には何時の間にか、より青くて柔らかな光の珠がいくつも、瞬く。
「お腹にですね、仔等を抱えた者が多いからって。あたしをワザワザ数日前から先遣りにして迄、ね。ずーいぶん、な気の遣い様で!いつもなら、ヒトリでさっさと終わらすのに」
こそこそと、胡蝶さんが耳打ちする。
「でも。この湾に迎えるって、譲らなかったのはあるじなんです。ここより条件の良い処も、あったのに」
美鶴の仕事のひとつに、アヤカシ達を渡す事があるのは、知っていたけど。
ヒトの街に迎える、事もあるんだと吃驚した。
「亘様、この湾は亘様の街の川に。貴方様が、いつも御心を砕かれている、あの川に繋がってるんですよ」
「あ、っ、え、っ、え、え?そう、なの?」
どうして胡蝶さんが「あの川」って?どうして、知ってるんだろう?
くすり、と笑って後ろからぎゅう、とされた。
「あたし達のセカイではね。そうゆう事はちゃぁんと、判るものなんです」
「う、ん、と、」
恥ずかしさとはまた別の、まぁるい柔らかさを持った熱がじんわりと背中越しに伝わる。
「あら、お邪魔様?」
五十月さんが、ふふふ、と笑う。
「来年には、きっと姉も還ってきます。そうしたら、今度は姉妹でお会い出来ますね」
また、来年。
僕はまた、この優しいヒト達に逢えるのかと思うと嬉しくなる。
もしかしたら、また僕は自分の夢を渡ってるのかもしれなくて。次に目を覚ましたら、忘れているかもしれなくて。だけど、だけど。
また、来年。
この約束は憶えていよう、と肩に廻された腕をきゅっ、とする。
胡蝶さんの息を呑む気配、と同時に背後に不穏な気配が突き刺さった。鳥肌が立つ。
出来れば遠慮したい感満載の、気配だ。
文字通り、ぶすり。
確実に僕の真後ろにナニカぶっ刺さってる。
よかった、背中の気配は、既にない。
振り返ると、件の真っ赤な番傘だった。
「ち。胡蝶、まだいたのか。すまんな、手が滑った」
「そちらこそ、もうお帰りかと。あら!幸い、大事にはならなかったですし。お気になさらないで下さいな」
んな訳ねーだろー的に見下げた眼を、美鶴に向ける胡蝶さんに溜め息が出る。
いつも思う。余計な事、しなきゃいいのに。
「三橋様と言い、胡蝶殿と言い。御二人とも、貴方の事がとても好きなんですね」
「ハァ、そうですかね」
なんやかんやの流れで。
派手に取っ組み合いの喧嘩を始めた二人に、ややウンザリ気味の半眼で虚ろに答える。
何処をどう見たらそういう考えに行き着くんだろ。
僕にはサッパリだ。
さっきまでの温かな雰囲気、全部ブチ壊し。
七夕が、新しい生命達の誕生が、大切な約束が。
何よりせっかく今日、と言う日に美鶴に会えたんだったら。
ちゃんと今日、伝えなきゃと思ったのに。
「五十月さん。今日、美鶴の誕生日だったんです。ずーーーーっと、前から何あげようって考えてたんですけど。何がいいか、やっぱり解んなくて。雨、降ってて。美鶴ンとこ行けない理由が出来たならそれはそれでいいかな、って思って」
つい愚痴をぽつり、と洩らす。
「そーしたら、本人来ちゃうし。プレゼントなんて結局、用意出来てないし。まだ、オメデトウも言えてないし」
僕が今、一番伝えたい、言葉。
オメデトウ、とアリガトウ。
誕生日なんだから、オメデトウは当たり前で。
この広い世界で、同じ時間を過ごせる嬉しさと。
不意に向けられる、不器用な優しさに。
美鶴との想い出のどれもがとても、大切だから。
そう思えるのが、とても嬉しいから。
だから、アリガトウ、って伝えたい、のに。
僕は大事な言葉を未だに、持て余してる。
「それなら心配は御無用、かと」
「え?」
「大体ですねー!!!あるじはやる事が女々しーんですよ!仕事をダシにして、さりげなぁーく亘様に誕生節祝って貰おうなんて、稲荷寿司位アマイんですよ!バッレバレなんですよ!!!」
胡蝶さんが二本貫手突き(目潰し:危険です)を繰り出した。
それを美鶴が後方に跳んで流しながら右に身体を捻って、中段回し蹴りを繰り出す。
「はっ!?いい加減にしろ!!!用が済んだらさっさと社に帰れ、胡蝶!!!」
脇に入る予定だったハズの蹴りを、掌を使ったすくい受けで去なした胡蝶さんが、
胡蝶さんが、―――――
「いい加減にするのは、テメェだっつーーーーの!」
上半身を撓らせて、そのままの勢いで美鶴に頭突きをかました。
「!!!!!!」
フゥーーーーーーーーっ、と脇構えの型で〆た胡蝶さんは実に漢前・・・・・、いや。
いやいやいやいやいやいや!ちょっと待て!
「こここここ!胡蝶さん!?み、美鶴っ???死んでる!!?」
いや、死んでないだろうけどさ。
快心の一撃に確実にのびてはいる、と思う。
「御心配には及びません、亘様。刀背打ちですから」
「頭突きにみねうち、なんてあるの!!?」
「胡蝶殿、少々手厳しいのでは?」
ぷくくくっ、と五十月さんが吹き出す。
「いーんですよ!こっれぐらい!この馬鹿にはコレでもアマイ位です!!亘様!!!」
僕から顔を背けながら、何処か苛立った声で呼ばれる。
僕、何かしたんだろうか。
「は、はい!」
「あ、たしは。いえ、私はこの馬鹿に仕えてですね、結構な長さだと思うんですよね!!だけど!この馬鹿の誕生節を知ったのはひととせ前、去年が初めてです!!!初めて、亘様が言祝いで下さったから、」
ぎりり、と口唇を引き結んだ胡蝶さんを見て。
「悔しい、じゃないですか。亘様は全然悪くないってのは、判って、いるん、ですけど」
・・・・・・・・・・、解ってしまった。
「妙に今日は僕に絡むなぁ、って思ってたけど。なるほど。僕を使って美鶴にイヤガラセ、と」
言いそびれた言葉を持て余した存在が、ここにも、ヒトリ。
「ちちちち、ちが、あの、その。は、い。すすすすす!すみません、でし、た」
少しだけ意地悪く言ってみたら、あわわわ、と素直に謝られる。
だけどまだ、顔を合わせようとしてくれない。
「今迄、あるじと二人で。お互い、誕生節なんて、知らないし。あるじは、あんなだし。どうでも良かったんですが。あ、の、その。あのクソ餓鬼でも、あんなカオで笑うんだなぁ、とか。いつもの辛気臭いツラがちっとは、マシになるのは、あの、」
あたしも。ちょっとだけ、嬉しいかなぁ、って、
言い難そうにぼそぼそ、と呟く胡蝶さんがなんだか可笑しくて、笑ってしまった。
むぅ、と胡蝶さんがむくれる。
「ごめん、ごめん」
「だから、心配御無用、と申しましたでしょう?」
五十月さんが心配そうに集まってきた海蛍達を、宥める様に指先であやす。
「私共のセカイでは、ヒトが己の誕生を言祝ぐ、事は稀ですからね。弱みに繋がる事も少なくない、ですし。でも、」
どんなに小さくても、どんなに果敢なくても。
はっきりと明滅を繰り返す、生命の灯火。
生れ落ちた喜びを、生きる事の嬉しさを精一杯、輝いて、瞬いて、熾す生命の火。
とても温かくて、とても大切なヒカリ達。
「よい、ものですね。生まれた事を言祝ぐ、と言うのは。この仔等が生まれて、とても、とても、嬉しい、という事ですものね」
五十月さんが擦り寄ってきた海蛍に、柔らかな笑みを向ける。
海蛍達が嬉しそうに一層、さざめいた。
その時、眩しそうに顔を顰めた美鶴に気付いてはいたけども。
・・・・・・・・・・、見なかった事にした。
*
ぶ。
ぶぶぶぶぶ、くくくくくっ。
く、くくくくくくく・・・・・・・・!
「あの、亘様」
「なに?」
笑い声を極力、抑えてる、つもりだけど。
ちょっと、いや、かなり、微笑ましい。
「あの、ナンでこのクソ餓鬼、もとい。あるじを、私が背負わなきゃいけないんでしょーか」
「そりゃぁさ。派手にのしたのは胡蝶さんだし。僕、家に帰ってお風呂入りたいし。やりたい事もできたし。まだ、目を覚まさないって事は相当、キマってたと思うし、と。言う訳だからさ、胡蝶さんが責任持って美鶴を社に連れて帰ってよ?」
「いやその!アレは、刀背打ちで!!」
「頭突きに刀背打ちなんて、ありませんから」
むぐぐぐぐ、と俯いた胡蝶さんのカオを鬼灯提灯の灯が照らす。
無理矢理、顰めっ面をカオに貼り付けてるのが胡蝶さん曰くの、『バッレバレ』だ。
照れ臭いだけなんだろうなぁ、と思う。
「あの、亘様。すみ、ません。その、大人げなく、て。邪魔、しちゃいました。あるじ、亘様が社にいらっしゃるのを待ってたんですよ。本人、カオに出してないつもりなんでしょーけど」
よ、っと小さく声を洩らすと、そっと美鶴のずり落ちてきた身体を元の場所に戻す様に身動ぐ。
「海蛍、見せたかったんでしょうねぇ。それに、相当嬉しかった、んでしょうね」
去年、とぽつりと呟く。
つきり、とする。
心臓のあたりが、じくじくと痛み出す。
「でも、結局。僕は、」
去年も、今年もマトモに御祝い、してないのに。
「亘様が、居れば、ただそれだけで。いいんだと、思います。あるじは、貴方様をとても大切にしてらっしゃいます、から」
先回りして、僕の言葉を遮ると柔らかく、笑う。
少しだけ、淋しそうに。
違うと思う。ううん、それは、違う。
僕が居ればそれでいい、だなんて、絶対に違う。
胡蝶さんは、全然気付いてない。
ヒトリでさっさと終わらせれる仕事も、胡蝶さんを先に行かせたのだって。。
それこそ、僕に言ってくれた様に、胡蝶さんにも海蛍を見せたかったからなのに。
全部、美鶴のせいだとは思うけど。
美鶴は、絶対的に言葉が少な過ぎる。
あぁ、狡いな、と思う。
なんで、フタリして美鶴の事でもんもんとしなきゃいけないのか。
・・・・・・・・・・、段々、ムカついてきた。
「亘様?もう少し行きますと、右手に脇道がありますので。その脇道をひたすら、真っ直ぐにお進みになれば、」
「ねぇ、胡蝶さん。僕、目を覚ましたら、どれぐらい経ってるの?朝とか?一時間?二時間ぐらい?」
「あ、はい。恐らく、そんなには。すみません。なにせ、道筋自体、不安定なものですから。はっきり、とは解りかねます」
あ、それなら言うならきっと今だな、と思った。
すーーーーーーーーーーーーっかり、弛みきった美鶴の耳を引っ掴むと、すぅ、と息を吸い込む。
「なぁーに、何時まで甘えてンのさ!!いい加減、起きろ!この、甘えた!!!」
思いっきり、耳元で叫んでやった。狐耳が、思いっきりぴん!と張る。
そりゃぁ、そうだろう。僕は、今、ちょっと怒ってるから。
「な、おま、っ、わた、っ!!!!」
美鶴が、狐耳を押えて呻く。
「え、あ、えぇぇぇぇ!!!!?あるじ!!!?」
ぱちくり、とした胡蝶さんが僕と背中の美鶴を交互に見る。
「こぅの、っ!!!!喧しい、ワザワザ耳元で叫ぶな!!!!誰が甘えた、だ。誰が!!!!」
耳を押えながら、美鶴がのそり、と身体を起こそうとしたのを、がっ、と押さえ込んだ。
そうはさせるか!今更、だってぇーの!!!
「美鶴」
キッパリ!と言い切ってやる。
「あーもー!損した!損したァァァ!!!!僕、色々もんもん考えちゃったじゃん!!!あー時間の無駄だった!!!!!去年はさ、なぁんにも御祝いあげれなかったからさー!プレゼント用意しなきゃとかさぁ!悩んでたのにさぁーーーーっ!!!!」
「亘様?」
「ばっ!!!何すんだ!!!お前ね、」
「誕生日おめでとう、美鶴。ね、来年はさ。美鶴と僕と胡蝶さんと、あと美鶴の好きなアヤカシのヒト達と。みんなで、御祝いしよう?」
言いそびれていた、言葉。
美鶴の生まれたこの日が、嬉しくて仕方ない。
自然に顔が、にやにやする。
「ありがとう。僕を迎えに来てくれて。五十月さんや、海蛍の仔達をこの街に迎えてくれて、ありがとう」
一番伝えたかった、言葉。
美鶴と出逢う色んな出来事が、毎日が、楽しくて仕方がない。
美鶴はとても、大切な友達だから。だから、
「みんなで、御祝いしよう。だって、折角の美鶴の誕生日なんだもん!!御祝いナシは、淋しいじゃない?みんなで七夕もいいよね。誕生日と七夕!両方御祝いしたらさ、きっと賑やかで楽しくて、嬉しいよ!」
「ば、」
ぽかん、とした美鶴が口を開く前に。
「それも、いいですねぇ。らしくない、けど。でも、いいですねぇ」
やっぱり先回りして、美鶴の言葉を遮る。眼を細めて、嬉しそうに胡蝶さんが笑う。
「ヒトリで不貞腐れてるよりは、ぜんっぜん!マシですよね、あるじ。もう、八つ当たりされるのは御免ですしぃ!」
「亘。いい加減、腕、邪魔だ」
うんざり、したような溜め息が零されたけど。
全くの拒絶の言葉は、吐き出されなかった。
「あのさぁ。全然、説得力ないからね!!!最初から嘘寝してたの、『バッレバレ』だからね、美鶴。いくらさー、胡蝶さんに甘えたいからって僕をダシにしないでくれるかなァ!!!!」
「ハァ!!?ばばばば!こ、れは!いろ、いろろ!!!色々と、あって、だな!!!」
本日何度目かの、ぱちくり、を胡蝶さんは数回して。
あははははははは、と声を立てて笑う。
ぷ、くくくくくく、と僕も笑う。
美鶴は声にならない言い訳を、唸り続けてる。
さて、と。
脇道がもうすぐそこに見えてきたから、僕は一気に駆け出した。
それにこれから、僕はやらなくちゃいけない事があったから。
「じゃっ!胡蝶さん、しっかり背負って帰って下さいねーーー!!!!今日は、胡蝶さんに譲るんですから!美鶴に御祝い、ちゃんとしてあげて下さいねぇぇぇ!!!」
言いそびれた言葉を、ちゃんと見つけられますように。
僕は急いで帰ろう、帰って、そうしたら。
「明日は、三人で!御祝いするからねーーー!!お稲荷さん、今年は五目御飯で炊くからぁぁぁ!」
明日は、三人で。その次の年は、みんな、で。その次の、次の、次の年も。
みんなで、御祝いしよう。君の生まれた、日を。
狐穴を抜けるその前に、一度だけ振り返ると。
遠くの方で赤い焔と青い焔が綺羅星みたいに瞬いて、寄り添い合っていた。
―――――Though it became late, Happy Birthday to Mitsuru! !
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