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このブログは小説・映画の「ブレイブストーリー」の二次創作兼雑記ブログです。原作者様、各権利元関係者様とは一切関係ありません。
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なんとか、こうにか。

カタチにすることができましたけども。回収しきれなかったものもたくさんあります。
うんうんと、長く長く悩んでみたものの。
結局、自分は少女まんがから逃げれない事に気づく。

不甲斐なさは、いつだってたくさん。
課題が最初よりもたくさん、でてきてへこんでみたり。
でも、だいそれたことを、ヒトを書いてみたくて。

まぁ、結果は言わずもがなでしたが・・・・・
また、明日詳しい用語の説明(言い加減、またか・・・)しますね!

今回、かなり長いですので。
お気をつけくださいな・・・・・!
最後、に。

お付き合い頂いて、本当にありがとうございました!!!


狐草紙異聞ー別項ー宵待夜想(後)




はたり、はたり、はたり。

最初に来た時と同じように強い風が吹く。

でも、最初に来た時とは違う景色がそこに広がっていた。
こんな風に、黄泉路を照らす橙色の灯火なんてなかったもの。

ゆらり、ゆらりと橙色の焔たちが路のずっと先まで連なっている。

送り火、と言うものなんだろうか。

それらはやわらかく、やわらかく黄泉津比良坂を照らしている。

もうひとつ、違うことがある。
あたしの身体が、ヒトの姿を取り続けていること。

あたし、なんでヒトの姿のままなんだろう?

「おい。お前のタマシイの半分、返すぞ」
「わ、わ、美鶴いたの?」

ふわり、と美鶴の手のひらで踊っていた青い御魂があたしに還ってくる。

おかえり、椿。おかえり、あたし。

「ねぇ、あたしなんでこの姿なの?」
「お前が強く、その姿を望んでいるからだ」

あぁ、そうか。タマシイだけの現象でしかなくなっても。
あたし、この姿でいたいんだ、な。

「どうした?」

当たり前だけど。
いつでも、どんな世界にいても美鶴は変わらないんだなと思った。
揺るがない、確かなものを持った存在。

「ううん、美鶴はやっぱり綺麗だなぁって思って」
「お前の方が綺麗じゃないか」
「はい?」

ええっと、えっと?今美鶴は綺麗って言った?

「お前に、よく似合っている」
「え、あ、ああそう、着物ね。うん、なかなか粋でしょう?桂尾姐さんが選んでくれたの」

・・・・・ひとり、勘違いした自分が恥ずかしい。

これは姐さんお気に入りの、着物の合わせだった。
璃寛茶(りかんちゃ)色の羽織りには、金色の扇模様がそこここに、散らされて。
振袖は水浅葱(みずあさぎ)色から藍色に徐々に変わっていき、その上を白い桜が舞っている。

そして、女郎花色の帯は文庫結びで。

あたしによく似合う、といつも言ってくれていた。
思い出したら、少し込み上げた。

早く、往かなきゃ。
きゅっと、拳を作って握りこむ。

「せっかく、現世で送ってくれたのに。路筋を曲げちゃってごめんなさい」
「誰だって、夢を見る」
「え?」
「現実に近い夢を見ることも、たまにはあるだろう」
「ありがとう」

まっすぐに、ヒトの目線で美鶴を見たのは初めてかもしれない。
金が掛かった緑の眼は、最初に見た時よりもずっと金色に近いことに気づく。

あれ?似てると思ったけどなぁ。なぁんだ沙羅兄さんとは、全然違うや。

「送ってやる」
「いいよ、美鶴。あたしひとりで、往ける」
「早く来い」
「って、話聞いてないでしょう??」

1人すたすた、と路を往く美鶴を追いかける。

何だか、なぁ。
早いよ、美鶴。せっかく送ってくれるんならもうちょっと合わせてくれたって、

「ひとつ、解らないんだが」
「なに?」
「なぜ、お前のタマシイの半分はお前に戻らず、俺のところに来たんだ」

ああ、なんだそんなことか。

「助けて欲しかったんだよ」
違うけど。もう一度、逢いに行きたかったんだけど、ね。

「やっぱり、消えちゃうのって嫌だもん。あたしもちゃっかりしてるよね」
「でもそのおかげで、お前を見つけることができた」
「うん」
 
仮初の椿は、お客なんか取りたくなった。
そうして、里を出た日、あたしから離れた時に知ってしまうんだ。
自分は、あたし達は本当はこの世界に存在なんかしていないって。

どういしていいか困ったんだよ。でも、逢いたいヒトがいた事を想い出す。
 
そうしてあたしの半分は世界を、時間を越えて逢いたいヒトに逢いに行ったんだ。
 
「あたし、一度でいいからヒトになってみたくってね。何処でもよかったんだと思う。けど、綺麗な着物を着た姐さん達が羨ましくって」

花街、がひどく綺麗に思えたから、だからこの里に決めた。 
でも、いくら豪奢な着物で外見を飾り立てたって。
色(身体)は売っても、心は売らないと息巻いても。
 
姐さん達は、籠の中で愛でられる美しい金糸雀(カナリヤ)だった。美しい声で唄っても、それが相手に伝わることはない。
だって相手にとっては、ただの啼き声でしかないから。
 
そうして金糸雀は、いつか唄を忘れて。
でも、待っている。
いつか、本当の唄を歌える時が来るのを。それこそ、寝物語に聞くお伽話でしかないのを知りながら。
 
「でも、あたしはやっぱり夢見てただけだったみたい。自分以外の誰かに形(なり)変われれば、自分の運命よりもましな運命が用意されてると思ったの」
 
だけども、違うのね。
誰かよりもましな運命なんて、ないの。
皆、それぞれ背負うモノが在るのだから。
 
「お前は、本当ならもっと、永く生きるはずだった」
「そうなの?」
「お前、どうしてあんなとこにいたんだ」
「夏椿が咲いたから。急いで、教えようと思ったの。美鶴の着物は朱色だからきっと、あの白い夏椿が似合うと思ったの」
 
そう、急いで教えたかった。自分の行動範囲から随分、外れているのは知っていたけど。
あたし周り、見てなかった。
 
「あの時、さ。一緒にいた男の子、珍しいね。美鶴もあたしも視えるなんてさ。美鶴の友達?」
「違う」
「そう?」
 
ヒトが好きじゃないと、洩らしていたいたのにね。
あの子の側にいた美鶴は神様の顔じゃなかったよ、気づいてる?
 
「大事にした方がいいよ。あたしは友達いなかったから、羨ましいもん」
「ヒトとアヤカシが友達になれるものか」
「美鶴は神様じゃない」
「アヤカシと変わらんさ。そんな事、誰が決める?ただ、力があるかないかの違いだ」
 
遠い、なぁ。
今、さ。美鶴とあたしの距離は近いけど、立っている場所が違う。
きっと、見えている風景も、背負うモノの重さも違うのね。
他にない力を持つ存在は、えてして不幸だ。
 
割に合わない事も、背負わなければいけないから。
 
「アヤカシと神様がそう、違わないように。ヒトとアヤカシもそんなに違わないかも知れないよ」
 
そうだと、いい。あのお社に美鶴ひとり、は淋し過ぎるから。
先を往く美鶴が、ふぃに立ち止まる。
 
「俺と係わって、お前は運命が変わってしまった。俺はいつも、肝心な時に何も出来ない。喪ってばかりだ。そんなの、もうたくさんだ。もう、嫌なんだ」
 
美鶴、あなた神様でしょう?
もっと、神様は理不尽でなくちゃ。もっと、残酷でなくちゃ。
でも、ここにいるのは、あたしと同じ幼いこどもだった。
 
「運命なんて、日々変わるものだよ。勘違いしないで。あたしはたまたま、運悪く死んじゃっただけ。美鶴のせいじゃないよ」
 
うん、誰のせいでもない。自分で変えられない運命もごめんだ。
誰かに、何かに係わって自分で運命は変えていくモノだと思う。
 
「あたしは、美鶴に逢えてよかったよ。あのお社は、お昼寝には最高に居心地のいい場所だったし」
「ふぅん。昼寝場所、ね。寂れて、静かだからな」
「まぁ、そうだね」
 
伝えたい事は、ちょっと違うんだけども。
 
「ねぇ、美鶴。生きていく以上は、誰かと何かと係わっていくものだと思うよ。絶対にひとり、なんかじゃないんよ」
 
ゆぅらり、ゆうらりと揺れる送り火。
ひとりで生きて、ひとりで死んだとばかり思ってた。
でも、あたしひとりじゃなかった。
 
姐さんがいた。美鶴がいた。おじじがいた。里のみんながいた。兄さんも。
気づくのが死んでからなんて、遅過ぎるけど。
 
そう、沙羅兄さんを、もとの世界に還さなきゃいけない。
 
「美鶴、頼んでもいいかな?あのね、兄さんが。桂尾姐さんが言ってたでしょう?沙羅兄さん。あたしを追って多分。黒助稲荷を、要御扉を通ったんじゃないかな」
 
黄泉の淵には時間、というものがない。
過去・現在・未来もしくは異世界が同時に流れている。
あたしが、中津国に来た事で時間が、運命が書き換えられた。
 
ニセモノのあたしが都合のいい様に時間が出来上がってしまった。
ニセモノの存在なのに、あたしは兄さんを巻き込んじゃった。
 
「あの扉を案内もなく通れば、どこに飛ばされるかわからないぞ」
「うん。多分、あたし達と違う世界にでたと、思う」
 
どうして沙羅兄さんは、扉の事を知っていたんだろう?
でもそれを、聞くことはもうあたしにはできないけども。
 
「お願い。兄さんを、もとの世界に還して」
 
美鶴が頤(おとがい)に左手を当てて、何か考えるように眼を伏せる。
何度目かの、ため息を深く吐きだす。
 
「出来る限りは」
「ありがとう」
 
ほうら、やっぱり優しいじゃない。あたしもう、なんか充分だなぁ。

もう、いいや。もう、充分。
 
「じゃぁ、もうここでいい。大丈夫、今度はちゃぁんと常世に往くから。美鶴は、さ。もう、いきなよ」
「送るといったろう」
 
「わっち、湿っぽいのは好きじゃありんせん」
 
あたしの中では、最高に優雅に腰を折って礼をする。
 
「有難う、御座いまんした」

見送られるのは、一度でいい。
あの送られる時だって、頑張って笑った。二度目は、できそうにない。

だから、あたしが美鶴を見送りたかった。

「お前さっき、『友達はいなかった』と言ったけど。俺は友達じゃない奴を社には入れない」
「え、」
「俺とお前はともだち、ってやつだろう。俺は、まだこの先もあの社にいるから。友達なら、いつか」

――――――絶対に来い、待っててやる。

「美鶴?」

言われた言葉が信じられなくて。
顔を上げると遠くに、駆けていく金の大きな狐の影が見えた。
もう、何が何だか、で。

でも、思いっきり失恋した事は確かだ。言われてしまったものは仕方がない。

「ばーか。友達、ねぇ?」

くすくすくすくす。
まだ、間に合うだろうか?

「あの子にも、ちゃぁんと伝えるんだよぉぉ、あんまり素直じゃないと、振られちゃうんだからねぇぇぇぇ」

できるだけ、大きな声を張り上げる。

「今宵は月も出ぬさうな、か」

あたしは、あたしの路に向かって一歩踏み出す。

(待てど暮らせど来ぬ人を)

あたしは、待たないから。
運命だって、日々変わっていくものなのよ?

女の子はね、強いものなの。

(宵待草のやるせなさ)

失恋のひとつやふたつで、泣いていられないものなの。今度逢う時は絶対に後悔させてやるんだから、ね。

(今宵は月も出ぬさうな)

月明かりの下なんかじゃなくて、夢なんかじゃなくて。

また、お日様の下で、輪廻の環が重なるその時に、逢おうね美鶴。

さよならは、言ってない。また、逢えると思うから。

だから、今は違う言葉をあなたに。

元気で、ね美鶴。




 
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