春のりんかく。

季節の花木の匂い。

人によってそれぞれあると思います。私個人としては、春の匂いって奴は結構多い気がします。自分の回りの環境が恵まれているのかもしれませんが。

 

近所のお宅の白木蓮の匂い、公園の梅の木、田んぼのなかの菜の花。

 

ちょっと苦手だけど、この匂いで春が来たと実感出来る沈丁花。

 

近所のおばぁちゃま達がカラフルな割烹着にボウル持ってちょっと人目につかないＪＲの線路脇の土手でのんびりと土筆取りをしているのを見ると、春だねぇとしみじみしてしまう。

 

たんぽぽの黄色は目にも鮮やかで、どことなく浮かれた気分になる。もう少しするとシロツメ草、その次は蓮華か。賑やかだなぁ。

 

暖かくて、いい匂いがして、のんびりと眠く退屈。そう思えるのは幸せなことだ。

 

忘れ難い思い出がある。

 

季節は春で。

私は小学５年生で、図書館から借りた本を校門から出てすぐに読みながら歩いていた時（落ち着きがない奴だった！）頭の上から私を呼ぶ声に顔を上げると幼馴染が図書室のベランダから体を乗り出していて、「読みながら歩くと転ぶよ」と笑う。

 

私が「そっちこそ危ない」なんて可愛くない言葉を言っても、彼女はころころと笑っていて。春の空気にとても馴染んだ彼女が馬鹿みたいに眩しくて夢みたいに綺麗だと思った。

 

たぶん、この先どんな人に出逢っても彼女が一番綺麗だと思うんだろうなぁ、となんとなく決めてしまった。

 

春になると思い出す、大事な記憶のひとつです。